Q&Aコーナー
リース会計Q&A(基礎編)

1.適用範囲・適用時期

【新リース会計基準の適用範囲】

Q1.

今回の新リース会計基準はどのような企業に適用されるのでしょうか。

A1.

新リース会計基準では、「本会計基準は、リース取引に係る会計処理に適用する。」(会計基準第3項)としており、大会社等の会社の規模による適用範囲は定められていません。「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小企業会計指針」)が適用されない大会社等については、リース会計基準が適用されます。 「中小企業会計指針」が適用できる会社は、リース会計基準を適用しないで、「中小企業会計指針」により会計処理することができます。「中小企業会計指針」によれば、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手は賃貸借処理ができることとされています。
【新リース会計基準の適用時期】

Q2.

新リース会計基準はいつから適用されるのでしょうか。

A2.

新リース会計基準は、平成20年4月1日以降開始する連結会計年度及び事業年度から適用されます。(会計基準第23項)
ただし、四半期財務諸表に関しては、平成21年4月1日以降開始する連結会計年度及び事業年度に係る四半期財務諸表から適用されます。(会計基準第24項)

2.判定基準

【ファイナンス・リース取引、オペレーテイング・リース取引の定義】

Q3.

ファイナンス・リース取引、オペレーテイング・リース取引は、どのように定義されているのでしょうか。

A3.

ファイナンス・リース取引とは、解約不能かつフルペイアウトのリース取引をいいます。(会計基準第5項、適用指針第5項)オペレーテイング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。(会計基準第6項)自動車リース取引は、中古車市場が発達しているため、残存価額を反映したリース料が算出されます。残存価額を考慮した判定の結果、大半がノンフルペイアウトのリース取引(オペレーティング・リース取引)となります。
【ファイナンス・リース取引の具体的な判定基準】

Q4.

ファイナンス・リース取引の具体的な判定基準について教えてください。

A4.

ファイナンス・リース取引とは、解約不能かつフルペイアウトのリース取引をいいますが、具体的には次の(1)又(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定されます。
  • (1)

    現在価値基準
    解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、見積現金購入価額の概ね90%以上
  • (2)

    経済的耐用年数基準
    解約不能のリース期間が経済的耐用年数の概ね75%以上
なお、自動車リースは中古車市場の存在等により、借手がリース物件に係る殆どすべてのコストを負担することとならない場合が多く、原則的基準である現在価値基準により判定を行うのが一般的です。
【所有権移転外ファイナンス・リース取引の分類】

Q5.

ファイナンス・リース取引はどのように分類されるのでしょうか。

A5.

会計基準では、ファイナンス・リース取引と判定されたもののうち、次の(1)〜(3)に該当するものを「所有権移転ファイナンス・リース取引」、それ以外を「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分類しています。(適用指針第10項)
  • (1)

    契約上、リース物件の所有権が借手に移転するとされるリース取引
  • (2)

    「割安購入選択権付」のリース取引
  • (3)

    「特別仕様物件」のリース取引(第三者に再リース又は売却することが困難なもの)
自動車リース取引においては、(3)に該当する取引はほとんどないものと思われます。
【リース車両に重要性が乏しい場合の簡便的な取扱い】

Q6.

全てのリース車両について、ファイナンス・リース取引、オペレーテイング・リース取引の判定をするのでしょうか。

A6.

全てのリース車両について1契約ごとに判定します。ファイナンス・リース取引として判定された場合は、売買として処理することとなります。
なお、借手は、個々のリース車両に重要性が乏しい場合の簡便的な取扱いとして、1契約300万円以下(維持管理費用除き)及び1年以内のリース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができます。
(適用指針第34項、第35項)
【維持管理費用の取扱い】

Q7.

自動車リース料に含まれる税金、保険料等の維持管理費用の取扱いについて教えてください。

A7.

自動車リース料には、登録諸費用・諸税・保険料・管理費・メンテナンス費用等の維持管理費用が多く含まれていることから、一般的にリース料総額に占めるその割合は重要性があるものと思われます。
したがって、原則として、個々のリース資産の重要性の判定(1契約300万円以下)、現在価値基準の判定において、維持管理費用相当額を控除します。
(適用指針第14項)
【メンテナンスリースの判定】

Q8.

メンテナンスリースについてのファイナンス・リース取引、オペレーテイング・リース取引の具体的判定方法を教えてください。

A8.

メンテナンス付かどうかは、リース取引の判定に直接関係ありませんが、メンテナンスリースには維持管理費用にメンテナンス費用が含まれていることから、リース料からメンテナンス費用、税金、保険料等の維持管理費用相当額を控除して判定を行うのが一般的です。

3.借手の会計処理

【旧リース会計基準との主な変更点】

Q9.

旧リース会計基準からの主な変更点を教えてください。

A9.

旧リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引に関し、一定の注記を条件として、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことができましたが、「新リース会計基準」では、当該処理を廃止し、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととなります。
(会計基準第9項、適用指針第21項)
なお、オペレーティング・リース取引は、従来通り賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行います。
【所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理】

Q10.

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手の具体的な会計処理について教えてください。

A10.

借手は貸借対照表に、リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上します。(会計基準第10項、適用指針第21項)
また、損益計算書には、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとしてリース資産の減価償却費を計上します。(会計基準第12項、適用指針第27項)

4.貸手の会計処理

【所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理】

Q11.

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る貸手の具体的な会計処理について教えてください。

A11.

貸手は貸借対照表に、リース投資資産を計上します。また、損益計算書には、取引実態に応じ次のいずれかの方法を選択し、継続的に適用します。
(1)から(3)のいずれの方法を採用しても、各期における利息相当額は利息法により配分され、同額となります。(会計基準第13項、適用指針第51項)
  • (1)

    リース取引開始時に売上高と売上原価を計上する方法
  • (2)

    リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法
  • (3)

    売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法